関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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2019年度(令和元年度) 意見書

携帯電話の違約金等について省令で定めることに対する意見

第1 意見の趣旨

  1.   電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号)の施行に伴う電気通信事業施行規則の一部を改正する省令案(以下「本省令案」という。)につき,おおむね賛成する。特に,「違約金等の額と特定経済的利益の額との合計額が千円を超える(本省令案22条の2の17第4号)」ことを禁止する点に賛成する。
     ただし,総務省が電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号)施行後,今後毎年度行う評価・検証において,契約者が今後負担する料金総額(通話料及び端末分割代金等を含んだ金額)が現在の水準を超過しないことに留意して検証をするよう求める。

第2 意見の理由

  1. 1 本省令案は,携帯電話の契約者が適切かつ容易に事業者やサービスを選択できるようにするための具体的な内容を定めるものであり,その趣旨は賛成できる。
  2. 2 携帯電話各社が定めている2年契約の中途解約を理由とするこれまでの高額な違約金は,自社の契約者が契約解除をした上で,MNP(携帯電話番号ポータビリティ)を利用して他社と新規契約することを躊躇させるものである。
     このような高額な違約金の定めは,もとより消費者の交渉の余地がない上,携帯電話各社による横並びの金額設定により,事実上,消費者は,その負担を甘受せざるを得ない状態にあった。
     また高額な違約金の定めによりMNPを利用した新規契約が阻害されている現在の状況は,携帯電話各社の適正な競争状態とも評価できない。適正な競争状態であれば,携帯電話各社の経営努力によって利益を生み出し,契約者は携帯電話会社の料金やサービス内容を考慮してどの会社と契約するかを決定することとなる。その意味で,適正な競争状態は消費者の選択の自由を保障するものであり,消費者保護の観点からもきわめて重要である。
     この点,携帯電話は既に国民的なインフラストラクチャーとなっているが,総務省の行政指導(平成30年6月6日)及び公正取引委員会による調査報告(平成30年6月28日)により違約金の現状の見直しを求められたにもかかわらず,携帯電話各社は抜本的な改善策をとることはなかった。
     したがって,携帯電話各社にゆだねるのでなく,省令で具体的な違約金の上限額を定める必要性が高く,本省令案に強く賛成するものである。
  3. 3 本省令案の制定により,違約金の額が制限され,適切な競争が促進されるものと考えられるが,契約者が今後負担する料金総額が現在の水準を超過するようになればかえって契約者の利益を害することとなりかねない。そのため,総務省が電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号)施行後,今後毎年度行う評価・検証において,契約者が今後負担する料金総額が現在の水準を超過しないことに留意して検証をすることをあわせて求める。

2019年(令和元年)7月19日
関東弁護士会連合会
理事長 木村 良二

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