公益通報者保護法の一部を改正する法律案が閣議決定され、令和2年3月6日、国会に提出された。
同法律案は、①行政措置付きの内部通報体制整備義務の導入(300人以下の組織については努力義務)、②内部調査等に従事する者に対する刑事罰付きの守秘義務の導入、③行政や報道機関等への通報の要件緩和、④退職者や取締役への保護対象の拡大等を主な内容としており、当連合会が平成27年8月3日に発表した「公益通報者保護制度に関する意見書」及び平成30年8月23日に発表した「『公益通報者保護専門調査会 中間整理』に関する理事長声明」、平成31年1月18日に発表した「公益通報者保護法の速やかな改正を求める理事長声明」の趣旨に一定程度沿うものであり、公益通報者保護制度を利用しやすくし、通報者の保護を図る方向での改正であることから一定の評価ができる。
公益通報者保護法の改正をこれ以上先延ばしにすることが許されないことは、過去の意見書等でも述べたところであり、当連合会としては、今国会での成立を強く求めるものである。
その一方で、同法案には、不利益措置を行った事業者に対する行政措置・刑事罰の導入や、不利益措置の効力が民事裁判で争われた場合の立証責任の転換、証拠書類の持ち出しに対する免責ルールの明文化などが見送られるなど、不十分な点も見受けられる。また、内部通報体制整備義務の内容が抽象的なものであるため、ガイドラインの内容次第では、規制が骨抜きとなる可能性も否定できず、国会審議を通じて具体的な整備義務の内容を詰めておく必要性も高いと言える。
当連合会としては、今回の国会審議において、これらの課題について充実した審議を行い、法案修正や附帯決議等により、さらに実効性ある法改正を実現することも併せて求めるものである。
以上
2020年(令和2年)3月30日
関東弁護士会連合会
理事長 木村 良二