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2020年度(令和2年度) 声明
長期無期限収容及び超短期間仮放免後再収容政策を続ける入管収容政策に強く抗議し、送還を促進することを偏重する解決策に頼ることに反対する理事長声明
1
出入国在留管理庁(以下「入管庁」という。)は必要性・相当性のない収容を直ちに停止し、少なくとも原則、6か月以上の収容を停止すべきである。
入管収容施設において、退去強制令書発付処分を受けた外国籍・無国籍の人々につき、法務省及び入管庁の標榜する「全件収容主義」のもと、
必要性・相当性が全く要件とされない形で長期無期限収容が今日も続けられており
、特に、収容期間6か月以上の被収容者が、2014年以降、爆発的に増加している。その結果、累計収容期間が2~3年を超える被収容者も珍しくない状況となってしまった。この点、長期収容に対する送還促進一辺倒の解決策は、被収容者の実情を無視するものであり、また、遵法精神欠如の誹りを免れないと言わざるを得ない。
即ち、被収容者の中には、難民認定申請者が多数おり、その中には、帰国できない尤もな事情を抱えながら、難民認定1%未満という異様な低難民認定制度に阻まれて必要な保護を受けられない者たちも相当数含まれている。また、日本国内に日本人・永住者あるいは正規在留外国人の配偶者や子どもたちを持つ被収容者も少なからずおり、家族との別離に抗し、配偶者や親としての責任感等から帰国を拒んでいる者たちもおり、彼らの中には、本来在留特別許可を与えられて然るべき者も少なくない。
度重なる国連からの改善要求が出される中、必要性も相当性もない状態で「取り敢えず」長期無期限収容が継続されていく措置は直ちに停止されるべきである。
そして、欧州評議会指令、アメリカの連邦最高裁判所判決及び同判決後に整備された法制等において、収容期間につき原則6か月を上限に定め、例外的な場合においても司法審査等に服するべきものとされていることからすれば、収容期間は最長でも原則6か月とすべきである。
2 2019年以降、長期無期限収容政策に耐えかねた被収容者たちによるハンガーストライキ(以下「ハンスト」という。)が全国の施設において急増していたところ、
同年6月24日に大村入国管理センター(長崎県大村市)でハンストを行っていたナイジェリア人男性が餓死した。当連合会は日本の収容施設でこのような形で尊い命を失った同男性に哀悼の意を表する。
こうした事態を受け、2019年7月以降、入管庁は、ハンストで心身共に衰弱し極限状態に至った者に対し、いったん仮放免許可をした上、2週間程度で再収容をするといった対応を行っている。しかし、
同超短期間仮放免後再収容(或いはその繰り返し)に服する中で鬱病等の精神疾患を発症するなど心身に顕著な異状を来たす者、自殺未遂や自傷行為を繰り返す者などが出ていることにつき、深く憂慮すると共に同対応に強く抗議する。
数年にわたって収容されて心身の限界を通り過ぎた被収容者が、時に水分さえも断って倒れ、或いは10㎏20㎏と体重を減らして自分では立ち上がることも出来なくなった状態の中、2週間程度の仮放免期間中は一貫して、再収容に脅え、定められた出頭日に「鬱病」や内臓疾患の診断書を握り締め、それでも仮放免期間延長に一縷の望みを抱いて、がくがく震えながら出頭し、収容されていく光景が東京出入国在留管理局でも認められている。
長期無期限収容政策及び超短期間仮放免後再収容政策は、人間の心身に過剰な負担をかけ、その故障をもたらす行為であることが明白であるため、法務省及び入管庁は同施策を撤回し、その犠牲者たちを直ちに解放して療養させるべきである。
3 法務省・入管庁は、2019年10月に、法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」の下に設置された「収容・送還に関する専門部会」(以下「専門部会」という)での議論に基づいて入管法を改正しようと考えている模様であるが、専門部会で議論されている内容は、現場の惨状を適正に把握し解決する視点からはかけ離れたものが少なくない。
即ち、専門部会では、退去強制令書が発付されているのに帰国しないこと(送還忌避)に対する罰則の創設、複数回難民申請する者について送還を可能若しくは容易にする方法の模索、仮放免者の逃亡に対する罰則の創設が議論されているのに加え、収容に期限を設けるべきではないとの容認しがたい意見も出されている。難民認定申請者(なかには複数回申請後の訴訟で難民認定される者もいる。)や母国に帰れない事情を持つ人々に対して、適切な保護や資格を与える方法を度外視したまま、彼らに一方的に過酷な強度の圧力を掛けることとなり、更に、彼らを支援する弁護士や支援者にまで幇助罪・教唆罪の嫌疑を及ぼしかねない危険な意見が、専門部会内で続出しているのが現状である。
また、専門部会に対し、入管庁が「被退令仮放免者の実態」として、確定判決において認定されず公務執行妨害罪につき無罪とされた行為(警察官の胸をサバイバルナイフで突いたとされる行為)を仮放免者が行ったとの虚偽事実を記載した資料(資料作成日は、判決確定時より1年半以上後)を配布し、法務省のホームページでも公開していたが、国会でこの点を指摘されると、2020年3月27日まで閲覧停止(改訂作業中)とした。入管庁は、国会の指摘を「真摯に受け止め」「判決結果等を踏まえて」公表を行うと表明していたにもかかわらず、同日の再公開後においても、「被退令仮放免者の実態」についてはなおも「逮捕事案」の件数は公表しつつ、不起訴・無罪事案の件数は明らかにしないものとなっており、全く国会の指摘を受け止めたものとなっておらず、遺憾である。
①専門部会は、虚偽の事実に基づいて議論がなされてきた事実の深刻さを正面から認識し、特に、深刻な虚偽事実が含まれていることが明らかになった入管庁作成の資料全ての正確性について再検証してから議論を再開すべきである。かような真摯な検証のないまま行われる議論は、何ら立法の参考とならない。②専門部会委員は、収容・送還及び仮放免の現場を熟知し、且つ国際人権法・難民法の理論に習熟する者で構成すべきである。③難民認定制度・在留特別許可制度本体の改善をなさないままで収容・送還について議論することは著しくバランスを欠き、問題の真の解決に全く繋がらないことを銘記すべきである。
以上
2020年(令和2年)3月31日
関東弁護士会連合会
理事長 木村 良二
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