関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

2020年度(令和2年度) 声明

新型コロナウイルス対策に関する理事長声明

  現在,世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)による感染被害は我が国においても増加の一途を辿っており,収束の目途が立っていません。
 当連合会は,新型コロナウイルスにより亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに,ご遺族に対し心よりお悔やみを申し上げます。また,同ウイルスに感染された方々の一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。
 さらに,全国の医療従事者,行政職員,物流関係者をはじめ,連日,苛酷な状況において新型コロナウイルスと対峙し,懸命に職務に従事してくださっている全ての方々に対し,衷心より感謝申し上げます。
 当連合会は,以下に掲げた問題の解決,課題の実現に向け全力で取り組む所存です。
  1. 1 差別への反対と感染拡大収束に向けての協働
     新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,感染された方々や医療従事者及びその家族の方々らに対する心ない差別や偏見が深刻化しています。
     当連合会は,これらの方々を含む全ての方々へのあらゆる差別,偏見に強く反対します。そして,個人及び事業者がそれぞれの立場で感染拡大の収束に向けた諸施策に協働して積極的に取り組むことを求め,政府には当該取り組みに対する必要十分な支援を求めます。
  2. 2 国民生活安定化への措置の実施
     新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済への影響はリーマンショックを超えるものとの報道があります。現実に,事業者における経営状況の悪化に伴い,多くの市民が,失業や閉店・休業,給与の減額等による重大な危機に陥っています。
     当連合会は,急速な経済不安,社会不安の広がりに対して国民生活を安定化させるため,政府に対し,休業補償制度の拡充,家賃や学費の猶予ないし免除,住宅ローン等金融機関からの借入れに関する返済猶予等について,速やかな立法的解決を求めます。
     また,長期の学校活動の停止により,子どもたちは,学校という最大の学びの場を失っています。教育は,個人が人格を形成し,社会において有意義な生活を送るために不可欠の前提をなすものであり,子どもたちが教育を受ける権利は,憲法上保障されています。
     当連合会は,教育機関がインターネットなどの科学技術を駆使し,感染拡大の防止と教育活動が両立できるよう,また,貧富の差にかかわらず等しく教育を受ける権利が実現できるよう諸施策の実現を求めます。
  3. 3 事業者の救済のための支援措置の実施
     飲食業,観光業,小売業,製造業など業種の別を問わず,多くの事業者が緊急事態宣言発令に伴う事業活動の停止あるいは縮小により大幅な収入減少となり,深刻な経営不安を抱えています。経済活動が縮小・停滞することにより,今後の事業維持に望みを持てず,自らの命を絶つ事案が発生するおそれもあります。
     また,事業者に対して営業活動の自粛を要請することは,感染拡大防止という公の目的のために財産上の特別の犠牲を強いることにほかならず,これに補償しないということは,憲法29条3項の趣旨に反するものです。特に使用停止の要請を受けた当該施設が賃貸物件の場合,賃借人たる事業者が使用できない当該施設の賃料等を支払し続けることは極めて不合理です。
     当連合会は,営業活動を自粛する事業者に対する速やかな損失補償が行われるよう国に求めると共に,事業者に対するさらなる支援措置の拡大を強く求めます。
  4. 4 差押禁止立法の速やかな制定
     政府は,事業者に対しては持続化給付金,個人に対しては一人10万円の特別定額給付金を支給する旨決定しました。これらの給付金は,事業者の営業基盤の維持や個人の生活の維持に必要不可欠なものです。ところが当該事業者,個人が債務を負っている場合,当該給付金も債権者による差押えの対象とされるおそれがあり,債権者により差し押さえられてしまうと,事業者の営業基盤の維持,個人の生活の維持のための貴重な資金を失うこととなり,給付金の趣旨が無に帰すこととなります。したがって,債権者による差押えを禁止する立法を行うよう求めます。
  5. 5 司法機能の早期正常化に向けた取り組みの実現
     現在,全国各地の裁判所において,緊急事態宣言を理由とした民事・刑事・家事事件の審理期日を原則として取り消す運用を行っています。裁判官,職員の安全配慮及び裁判当事者を含めた感染拡大防止等の趣旨による対応であろうと思われます。しかしながら,裁判所の手続を利用する当事者にはそれぞれの切迫した事情があり,裁判所への出頭は不要不急の外出などと評価されるものではありません。また,裁判所における紛争解決機能は,立法・行政と並ぶ,国家機能の中核をなすものであり,かつ,人権の砦と言われる重要な機能を有するものです。したがって,緊急事態宣言下においても,可能な限り業務継続が求められるべきです。現在の裁判所の機能不全状態は,国民の裁判を受ける権利を必要以上に制約するものであり,自力救済を誘発しかねない,極めて危険な状態であるといわざるを得ません。裁判所は感染拡大を防止することと国民の裁判を受ける権利の両立をより積極的に模索すべきです。
     当連合会は,全国の裁判所に対し,感染拡大を防止しつつ,速やかに司法機能を回復させるよう,強く求めます。
  6. 6 おわりに
     当連合会は,新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の危機に直面している個人及び事業者に寄り添い,日本弁護士連合会や各地の弁護士会と連携を図りつつ,上記をはじめとするさまざまな問題の解決,課題の実現に関して,今後とも全力で取り組む所存です。

2020年(令和2年)4月27日
関東弁護士会連合会
理事長 伊藤 茂昭

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