2020年(令和2年)9月25日
関東弁護士会連合会
公益通報者保護法の一部を改正する法律が2020(令和2)年6月8日に成立し,その後,同月12日に令和2年法律第51号として公布され,公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることとなった。
公益通報者保護法(2006年4月施行)は,施行から5年後見直しが附則に明記されていたにもかかわらず,これまで改正がなされてこなかったものであるが,本改正により,通報者の範囲への退職者及び役員の追加,従業員数が300人を超える事業者に対する内部通報体制整備の義務付け,実効性確保のために行政措置(助言・指導,勧告及び勧告に従わない場合の公表)の導入,内部調査等に従事する者に対し,通報者を特定させる情報の守秘を義務付け(同義務違反に対する刑事罰を導入),行政機関への通報要件の緩和,行政機関以外の外部への通報の特定事由による保護要件の追加,通報行為に伴う損害賠償責任を負わないことの明文規定が創設され,通報者の実効的な保護について制度面の整備が一定程度前進したものとして評価しうるものである。
しかし,同改正法による公益通報制度が有効に機能するためには,公益を図るための内部告発を確保し,企業不祥事による国民の被害拡大を防ぐことを目的としつつ,事業者にとっても適切な通報の対応と体制の整備により企業価値と社会的信用の向上につながることが期待されるという,公益通報制度の社会的価値が正しく事業者,行政機関及び国民の間に十分に浸透し,通報者が現実的かつ実効的に保護されることが極めて重要である。
同改正法における衆議院附帯決議においても,施行にあたり適切な措置を講ずべき事項の一つとして「通報をしようとする者が事前に相談する場が必要であることから,民間における通報・相談の受付窓口の更なる充実に関し,日本弁護士連合会等に協力を要請すること」が求められており,今後,公益通報相談の増加も見込まれる情勢に鑑みて,当連合会においても通報者支援への取組を一層進めることは喫緊の課題であるが,現状において当連合会管内における公益通報相談窓口の設置は,東京三弁護士会や千葉県弁護士会など一部の弁護士会に限られている。
そこで,関東弁護士会連合会は,公益通報制度における通報・相談体制の更なる充実を目指して,当連合会管内全ての弁護士会において,所属全単位会における窓口設置・会内規則整備・継続的研修の実施・弁護士会内公益通報窓口の設置等,通報者支援の環境整備に努めるものとする。