今般,入管法(出入国管理及び難民認定法)改定案が取り下げられる見通しとなった。今回の法案は,当連合会が理事長声明で繰り返し指摘してきた通り,生命や自由が脅かされかねない場所への強制送還(ノン・ルフールマン原則違反)をはじめ数々の問題を含んでいた。
しかし,今回の法案が取り下げられても,司法審査を経ない無期限収容や難民認定制度等の問題点が解決されたわけではない。本年3月6日にウィシュマさんが収容中にお亡くなりになった原因究明とともに,出入国管理や収容制度・収容施設のあり方,難民認定や在留特別許可に関する制度を改革していく必要がある。
さらに,外国籍市民との共生のあり方自体についても,基本法の制定を視野に入れた根本的見直しが必要である。各種人権条約の個人通報制度や国内人権機関の実現も必要である。外国人を含む人権保障水準を国際水準にまで高める観点からも,国連の人権機関等国際的にも改善を求められている取り扱いを再考し,人権を無視した運用や法案提出を繰り返さないようにすることが必要である。当連合会も,引き続き注視していく所存である。
2021年(令和3年)5月20日
関東弁護士会連合会
理事長 海老原 夕 美