関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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2021年度(令和3年度) 大会決議

弁護士会や各士業と行政が連携して被災者支援をすることの重要性を確認し,より一層推し進めていく決議

 当連合会は,被災者支援において弁護士や弁護士会が果たすべき役割を再度確認し,弁護士が行政や他の士業と一体となって被災者支援を行うことの重要性を再確認し,今後も更なる連携強化を推し進めていくことを決意する。

2021年(令和3年)9月24日
関東弁護士会連合会

提案理由

  1. 1 弁護士による災害支援の広がり
     災害が起きた際に,行政や,自衛隊,医療従事者が,被災者支援の実施主体であることは社会の共通認識であった。他方で,弁護士は必ずしもそうではなく,弁護士が被災者支援においてどのような役割を果たすことが出来るのか,弁護士自身も明確に自覚しているものは少なかった。
     阪神淡路大震災,東日本大震災や熊本地震などの多くの震災や,台風や豪雨被害,雪害などの度重なる各災害経験の中で,被災者支援において果たすべき弁護士の役割は,議論され,その範囲を拡大し続けてきた。いわゆる自然災害ガイドラインもその一つである。
  2. 2 弁護士会と行政,他士業連携の重要性
     被災者支援の枠組みの一つとして,弁護士会と行政との連携,司法書士や税理士,建築士,社会福祉士等の他士業との連携については,当連合会が最重要課題として,管内弁護士会を対象とした災害研修会,災害協議会などにおいて繰り返しテーマとして挙げてきた。発災時に迅速に弁護士を被災者の方のもとへ派遣し,支援情報等の情報提供をすることが出来る行政との災害時における相談業務に関する協定(以下,「災害時協定」という。)の締結や,法律問題に限らず税務や建築など幅広い問題を一度に解決可能にする他士業連携による災害派遣のシステム作りは全国的に拡大と深化を続けている。
  3. 3 長野県弁護士会の取り組み
     当連合会に加入する長野県弁護士会は,令和元年東日本台風(令和元年台風19号)の発災時に,平時からの弁護士会と行政との連携を活かし,多くの単位会の手本となるであろう充実した被災者支援を行った。
     この台風は,令和元年10月6日にマリアナ諸島沖で発生すると,12日に伊豆半島に上陸し,翌13日にかけて関東地方や東北地方を進み,静岡県や関東地方,甲信越地方,東北地方などで記録的な大雨を降らせ,甚大な被害をもたらした。そのため,激甚災害に加え,台風としては初となる特定非常災害にも指定された。
     長野県では,千曲川などの主要な河川が氾濫し,広範囲で浸水被害が起きたが,長野県弁護士会は,発災当日の13日には災害時協定を結んでいる長野県に対して相談業務に対応できる旨伝達し,翌14日には災害対策本部を設置し,その後,速やかに自然災害ガイドラインの登録支援専門家の登録拡充体制の強化や,電話相談窓口の設置,被災者の方が行政等から受けられる支援の説明,債務減免等の方法,重要書類等の紛失への対処方法などの災害時Q&Aを記載した弁護士会ニュースを作成し,長野県や佐久広域連合加入の自治体等を通じた配布を開始した。その後も,行政とも連携をとりつつ,各自治体の役所,学校の体育館や公民館などで弁護士会による相談会や他士業との連携による相談会を繰り返し行った。
     この台風に関して行われた長野県弁護士会の令和元年度の電話相談の件数は141件,面談や出張相談を含めた相談件数は172件であり,長野県弁護士会が被災者支援において果たした役割の大きさが伺える。
  4. 4 静岡県弁護士会の取り組み
     また,令和3年7月1日から降り続いた大雨は,静岡県内に多くの水害をもたらすと共に,令和3年7月3日,静岡県熱海市内で大規模な土砂災害を発生させ,地域に甚大な被害をもたらした。この痛ましい災害において,長野県弁護士会と同じく,先鋭的な災害対策を平時から行っている静岡県弁護士会は,被災者支援において積極的な役割を果たしている。
     静岡県弁護士会では,災害時協定を,静岡県はもちろん,被害のあった熱海市,沼津市,富士市と締結しており,7月9日に被災者及び支援者向けオンライン支援制度説明会を実施すると,7月10日には沼津市から要請を受け災害NPOと共に,水害後の生活再建相談会を開催し,30組の被災者の方が来場し,19件の法律相談を行った。加えて,熱海市からも災害支援要請があり,今後も,行政や静岡県災害士業連絡会らと連携を取り合いながら,被災地への精力的な支援を予定している。
     発災直後からこのような迅速な対応が可能となったのは,やはり平時からの行政連携,士業連携が十分だからであった。
  5. 5 結論
     平時に準備していないことを災害時に実施することは出来ない。だからこそ平時からしっかりとした準備を行うのは,災害対策の基本原則である。
     当連合会では,長野県弁護士会及び静岡県弁護士会のこのような取組みを通して,被災者支援において弁護士や弁護士会が果たすべき役割を再度確認し,弁護士が行政や他の士業と一体となって被災者支援を行うことの重要性を再確認し,今後も更に連携強化を推し進めていくことをここに決意するものである。
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