関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

2022年度(令和4年度) 声明

技能実習制度の廃止を前提とした外国人労働者の受入れ制度の検討を求める理事長声明

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下「技能実習法」という。)施行5年を迎え、同法の附則が求める制度の検討時期に当たることから、2022年11月22日、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の下に、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が開催されることとなった。

 技能実習制度においては、技術移転による国際貢献という制度目的と、日本国内の労働力不足の解消及び安価な労働力の供給の手段としての実態が全く乖離している。そして、このような形骸化した制度目的を維持しているため、技能実習生には職場移転の自由がなく、対等な労使関係が構築されない結果、労働者としての権利が侵害され易い構造的問題点がある。実際、技能実習法施行後も、残業代未払いや労災事故の発生等の労働法令違反のみならず、パスポートの取上げや技能実習生に対する暴力等の人権侵害が相次いでいる。
 さらに、技能実習生が本国で高額の手数料を送出機関に支払うことが常態化しているため、技能実習生が来日時には既に借金に縛られていることも、技能実習生に対する権利侵害の原因となっている。
 そのため、当連合会としては、これまで技能実習制度の廃止を求めてきたところである(2017年(平成29年)6月27日付「外国人技能実習制度の撤廃を求める理事長声明」)。

 昨年7月には、古川禎久元法務大臣が、技能実習制度の見直しについて、制度趣旨と運用実態のかい離の解消等のポイントを挙げたうえ、「長年の課題を、歴史的決着に導きたい」と述べており、有識者会議においても、技能実習制度の廃止を前提とした議論がなされるべきである。
 そのうえで、外国人労働者の受入れを正面から目的とする制度の設計、転職の実効性の確保、本国での手数料徴収に対する規制、日本国内での外国人労働者受入れ側の管理体制、日本国内での外国人労働者の支援体制(特に日本語教育の充実)や保護体制の構築、及び家族滞在を含む定住化の促進等の各論点について、また、ひいては受入れ後の共生社会の実現についても、外国人労働者の権利保障の観点から議論がなされるべきである。

 当連合会は、改めて、構造的な人権侵害の問題がある技能実習制度の廃止を求めるとともに、外国人労働者の受入れ制度を議論するにあたっては、技能実習制度の廃止を前提として、外国人労働者の権利保障の観点からの議論がなされることを求める。

 2023年(令和5年)3月3日

関東弁護士会連合会   
理事長 若 林 茂 雄

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