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2024年度(令和6年度) 大会決議
大会決議
武器輸出の拡大に反対し、平和主義の堅持を求める決議
2024年(令和6年)9月27日
関東弁護士会連合会
提案理由
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1 政府は、2023年12月22日、「令和4年12月に策定された『国家安全保障戦略』を踏まえ」、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、共同開発国やライセンス元に防衛装備品を輸出することを認める閣議決定を行い、さらに、本年3月26日、次期戦闘機を日本から第三国へ輸出することを解禁する方針を閣議決定し、防衛装備移転三原則の運用指針を改定した。
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2 2023年の改定は、これまで認められていなかった殺傷能力のある武器の輸出を解禁したもので、従前の方針を大きく転換するものである。2024年の改定は、これに加えて、生産パートナー以外の第三国への輸出も、条件付きながら認めるものである。そして、その条件も、①国連憲章に沿った目的以外の使用を禁じる技術移転協定を結ぶこと、②現に戦闘が行われている国ではないことで足り、近い将来に紛争当事国になる危険性を有する第三国を排除しない。そして、現在、防衛装備輸出に関する協定を締結している国は15か国に上り、今後増加する可能性があるため、歯止めが効かなくなるおそれがある。
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3 そもそも、日本は、1967年以降2014年まで武器輸出三原則を掲げるとともに、1976年には、武器輸出三原則の対象ではない地域にも輸出を慎むとした首相答弁がなされ、事実上、武器の輸出は禁止されてきた。
これは、日本国憲法が柱として平和主義を掲げ、前文においても「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」している以上、国際紛争を助長する武器輸出を行わないことがこの理念に適うからである。当連合会も、憲法前文及び第9条は、武力により平和の実現を図るのでなく、専ら対話(外交)による平和の実現を憲法規範として定めていることを確認し、政府に対して、専ら対話(外交)による平和の実現を繰り返し要請している(2014年9月26日付大会決議、2015年9月18日付大会決議、2022年10月14日付大会決議)。武器ないし防衛装備を他国に移転して軍事能力を向上させることはこの理念に反するとの重大な懸念が生ずる。
ところが、以下に述べる通り、防衛装備の移転は拡大され、現実に移転されるようになった。
まず、2014年4月1日の閣議決定によって、武器輸出三原則が防衛装備移転三原則に変容され、前記の武器輸出を事実上できなくした首相答弁をなきものにした。それから間もない同年7月1日には、集団的自衛権の行使を認める「解釈改憲」が行われ、同閣議決定において、防衛装備移転三原則同様、防衛装備移転等による紛争解決という「積極的平和主義」がうたわれている。
そして、同年にはパトリオットミサイルの部品の輸出や、イギリスとのミサイルの共同開発が決定され、その後も2016年にフィリピンへ自衛隊訓練機が譲渡されるなど、防衛装備の移転が実際になされてきた。
さらに、この間も防衛装備輸出に関する協定を締結する国が増加し、防衛装備輸出の下地の整備がなされている。加えて、2022年3月8日には、防衛装備移転三原則が改定されて、現に紛争状態にあるウクライナへの装備品移転が認められた。2023年12月22日の改定では、ウクライナと限定することなく、国際法に違反する侵略又は武力による威嚇を受けている国へ装備を移転することを認めたほか、完成した武器を、共同開発したライセンス国へと移転することを可能にした。さらに、パートナー国が武器の完成品を移転した第三国へ、日本から部品や技術を移転することができるようにもした。このように、日本は、防衛装備輸出ができる場合を徐々に拡大してきたのである。
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4 そして、2024年の改定の結果、ついに、中核的装備であり、殺傷能力を持つ戦闘機を第三国へ輸出する道が開かれた。
しかも、前記の通り、今回の運用指針の改定は、平和主義に対して重大な懸念を生じさせる上、憲法改正手続きを経ることなく、単なる閣議決定という形でなされた。加えて、防衛装備を輸出する際の具体的な手続きについても、政府機関であるNSC(国家安全保障会議)での決定と閣議決定という、やはり国会の監視が十分に及ばない方法で決定がなされる。
このように、政府は、防衛装備移転三原則を採用し、さらに「積極的平和主義」のもと集団的自衛権を認めた前記2014年7月1日の閣議決定のみ行い、憲法改正手続きを一切とることなく、日本の平和国家としての姿を変容させ、既成事実化してきた。
当連合会は、これまでも、前記2014年7月1日閣議決定が違憲であることや(2014年9月26日付大会決議)、2023年12月22日の運用指針改定の前提となったいわゆる安保三文書の違憲性及び、これらを憲法改正手続きなしに行うことが立憲主義に反する行為であること(2023年9月29日付大会決議)を決議してきた。
そして、2023年12月22日及び2024年3月26日の運用指針改定も、平和主義に反するとの重大な懸念が生ずる事項であるにも関わらず、国会における議論すら経ずに、もっぱら閣議決定によって既成事実化する手法は、立憲主義の理念に反するもので、手続的にも到底容認できない。
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5 以上の通り、当連合会は、2023年12月22日及び2024年3月26日に行われた防衛装備移転三原則の運用指針改定が平和主義に重大な懸念を生じさせるものであり、これを撤回することを求めるとともに、立憲主義の理念に反する手続きでなされた武器輸出の拡大に反対し、平和主義を堅持することを強く求めるものとして、本決議に及ぶこととした。