法律専門家ではない人々を対象に、法とは何か、法がどのように作られるか、法がどのように用いられるかについて、その知識に止まらず、それらの基礎にある原理や価値を教えるとともに、その知識等を応用し適用して使いこなす具体的な技能と、さらにそれを踏まえて主体的に行動しようとする意欲と態度についてあわせ学習し身につけてもらう教育をいいます。
市民に、自ら主体的に考え、公正に判断し、行動する力を身につけてもらうことで、自由で公正な民主主義社会を実現する人の育成を目指すところに特徴があります。
このような法教育の考え方が、最近になり、新しい学習指導要領に取り入れられるようになりました。
このように、法教育は社会に浸透しつつありますが、他方で、法教育がどういうものなのか具体的にイメージしづらいという指摘もあります。
よくある質問とその回答をQ&A形式でまとめましたので参考にしていただければと思います。
Q 法教育って法律の勉強とは違うのですか?
A 法教育は、細かい法律の知識を勉強してもらおうというものではありません。市民のみなさんが法的な考え方や法の根底にある価値を学び、身の回りで起こる様々な問題について、自ら主体的に考え、判断し、行動する力を身につけることを目指すものです。
最終的には、自由で公正な社会を担う自立した市民の育成を目指しています。
Q 法教育の魅力はどこにありますか?
A 自ら主体的に考え、判断し、行動する力は、知識の学習だけでは身につきません。
法教育では、知識の学習だけでは得ることのできない力を習得することができます。
例えば、ある社会(集団)がある問題について一つの意見を形成する必要がある場合、最初に各個人がその問題について意見を形成します。
このとき、自ら主体的に考えて意見を形成するには、与えられた情報や意見を鵜呑みにするのではなく批判的に検討することが必要となります。
また、他者と議論するには異なる立場の人に対して説得的な意見である必要があり、意見形成に際し、相手や周囲への影響を考えるなど、多角的視点からの検討が必要となります。
さらに、問題について社会(集団)の意見を形成するためには、異なる立場の意見を聞き、検討し、時には自らの意見も批判的に検討することが必要となります。
法教育は、このような自ら主体的に考え、判断し、行動する力、すなわち、社会生活のあらゆる場面で求められる力を習得できるところに大きな魅力があります。
Q 法を教えると権利ばかり主張する人が出てきて、かえって住みづらい社会になる心配はありませんか?
A 私たちの社会は、かけがえのない一人ひとりを大切にし、異なる考えや感じ方を持つことを認める自由な社会です。
そのような社会では、意見や利害が対立することは予想されており、法は、異なる意見や利害をもつ人々が共存できる社会を目指しています。
法教育では、法のこのような価値を学び、他者との利害対立なども自主的に解決できるような市民の育成を目指しています。
権利を主張するだけではなく、権利を主張しつつも、同時に他者との利害対立の調整を図れる市民が増えれば、決して住みづらい社会にはならないと考えています。
Q 法教育の具体的な授業にはどのようなものがありますか?
A 代表的なものとしては、模擬裁判やルール作りの授業があります。いずれも自ら情報を集め、分析して意見を形成し、グループディスカッションの中で、これらを表現し、他者の意見を聞き、判断し、それぞれの考えを深めてもらいます。
そして、どのような答えが正しいというのではなく、どのように考えたのかという考え方の過程に注目します。
Q 教材作成の予定はありますか?
A 教員の方からは、法教育という抽象的概念を具体的な授業に落とし込むことが難しいという話をよくうかがっており、関弁連法教育センターでは、教材作成に力を入れていきたいと考えています。
教材作成には現場の教員の方の視点が極めて重要だと考えていますので、教材作成にご協力いただけるという方は、是非ご連絡願います。
なお、各地の弁護士会で作成された授業案は、弁護士会によってはホームページに掲載されていることもあります。また、当ホームページに記載している参考文献やリンク先には教材が記載されているものもありますので参考にしてください。
Q 法教育を実践している弁護士を紹介してもらえますか?
A 関弁連法教育センターにご連絡いただけば、紹介が必要な事情によって、関弁連の弁護士をご紹介することや関弁連管内の各弁護士会の法教育委員会におつなぎすることが可能です。