被告人が,道路上で,歩行中の高齢の女性の背中を後ろから突き飛ばして道路に転倒させ,抵抗できないでいるその女性から,現金在中の封筒が入った巾着袋ごと奪い取り,このときの暴力でその女性に怪我を負わせたとして強盗致傷罪(刑法第240条前段)で起訴されたものの,被告人は自分は犯人ではないとして争うという,法務省HP「よろしく裁判員」に掲載されているシナリオ。
このシナリオでは,被告人が犯人であるかどうかという点が争点となります。
検察官は,主として以下の事実を挙げて被告人が犯人であると主張します。
他方,弁護人は,主として以下の事実を挙げて被告人は犯人ではないと主張します。
このシナリオのもと,法教育センターの委員が裁判長と被告人・証人を演じ,参加した教員は,「検察官」「弁護人」の2チームに分かれて,それぞれ模擬裁判シナリオに沿って「冒頭陳述」「証拠調べ」「証人尋問」などを担当。
その後,検察官チームは「論告求刑」を,弁護人チームは「最終弁論」を起案して,法廷でお互いの主張をぶつけ合うという内容になっています。
事実を拾い上げて,論理的に組み立て,相手方の主張を意識しつつ,説得力のある主張を展開することが求められることから,学校現場でよくおこなれている「裁判員になったつもりで判決を考えよう」というプログラムに比べてより高度の技能が要求されます。
刑事模擬裁判が,司法制度の学習にとどまらず,子どもたちの思考の訓練,視野の拡大,表現力とりわけ人を説得する技術の向上など,様々な法教育的効果を期待できるのではないかというところまでつなげることを期待しています。