関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが,このたび司法の枠にとらわれず,様々な分野で活躍される方の人となり,お考え等を伺うために,会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

弁護士
小沼 正毅さん

とき
2026年7月23日
ところ
リモートインタビュー
インタビュアー
会報広報委員会委員長 井本大輔

今回の「関弁連がゆく」は、今年スペインで行われた第22回弁護士サッカーワールドカップに日本代表として出場し、見事優勝を果たされた小沼正毅さん(栃木県弁護士会所属)です。小学校時代から続くサッカーへの情熱、過酷な世界大会を通じた各国の弁護士との深い交流、弁護士業務とサッカーの両立の工夫、そして今後の目標について、さまざまなお話をうかがいました。

― 少年時代はどういう生活を送られていましたか。サッカーを始めたきっかけや、学生時代の取り組みについて教えてください。

小沼さん 小学校低学年、2年生くらいからサッカーを始めました。高校までは部活でサッカー中心の生活を送っていましたね。大学に入ってからはサークル活動になりましたが、非常に強いチームだったこともあり、週に3、4日はサッカーをするような生活をしていました。ポジションは、大人になってからはフォワードをやっています。

― 「弁護士だけが参加できるサッカーワールドカップ」の存在が司法試験の受験勉強のモチベーションになっていたそうですが、当時どのようにしてこの大会を知ったのでしょうか。

小沼さん 父(小沼洸一郎弁護士)が日弁連の副会長をしていた際、同時期に副会長をされていた本林徹先生が、日本が初めてこの大会に参加したときのメンバーで、父を通じてその存在を知りました。知ったのは大学生の頃だったと思います。私自身、大学に行くまでは弁護士になるという考えがほとんどなく白紙状態だったのですが、「面白そうな大会があるから出てみたい」と思ったのが弁護士を目指すきっかけになりました。受験生の頃はサッカーをする頻度は減らしましたが、できる範囲で続けながら勉強に取り組みました。

― 大会の概要や規模について教えていただけますか。

小沼さん 弁護士ワールドカップは43年の歴史があり、日本チームは約30年前に初参加しました。大会には、今回私が参加した年齢制限のない部門のほか、35歳以上や45歳以上などのカテゴリーに分かれています。大会全体で見るとヨーロッパが中心ですが、主催者のコメントによると、アフリカや南米、東南アジアなど世界中から40カ国以上が参加し、複数のチームを出す国もあるため、全体で90チーム以上が参加しているということです。

― 日本代表として世界大会に出るという夢を叶え、2008年のスペイン・アリカンテ大会で初参加を果たされました。初参加時の印象はいかがでしたか。

小沼さん 当時、私は27歳で体も動く状態だったのですが、公式な大会で外国人チームとサッカーをするのは初めてでした。初戦の相手はアルジェリアのチームだったのですが、その時の衝撃は今でも忘れられません。外国人選手の体格の大きさ、スピード、パワーが国内とはまるで違っていました。私自身、身長が180cmあるのですが、対峙するセンターバックの選手が190cmあることも珍しくなく、体のぶつかり合いでは全く歯が立たないと感じました。それまで日本で社会人の強豪チームなどと試合をする経験はありましたが、全く別の感覚でしたね。また、海外の選手はボディコンタクトが激しいだけでなく、サッカーに対する戦術理解が深く、試合の勝ち負けに対する熱量が圧倒的に違っていて、文化の大きな違いを肌で体験しました。

― 2014年のハンガリー大会では、無失点優勝を果たしたイタリア代表チームと同じホテルになり、現在も交流が続いていると伺いました。大変豪華なメンバーだったそうですね。

小沼さん はい、その時のイタリア代表チームとは毎日朝食の時間に顔を合わせたため、大会を通じて仲良くなりました。イタリアチームは国内全土でセレクションを行ってメンバーを選んでおり、キャプテンの Salvatore Scarfone 氏はセリエBで活躍した元プロ選手でした。さらに中盤には、現役時代にユベントスでジダンやデル・ピエロ、デシャン、インザーギなど名だたる選手たちと一緒に活躍した Fabio Pecchia 氏もメンバーとして参加していました。当時はナポリのアシスタントコーチをしており、現場で鍛え上げられた素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。「弁護士ワールドカップで優勝するチームはこれほどのレベルなのか」と衝撃を受けましたね。

― その後もご家族ぐるみで交流されているとお聞きしました。

小沼さん はい。2年に1度ほどの頻度でイタリアに行くため、大会後も5回以上は交流しています。Salvatore のローマの自宅に遊びに行かせてもらうなど、今でも親しくしています。Fabio は2019年にアビスパ福岡の監督に就任したため、その際は福岡で互いの家族と一緒に食事をしました。また、2025年の夏にはローマで Salvatore、Fabio の両家族と食事をする機会もありました。Fabio はパルマの監督をしていた時期もあり、日本代表の鈴木彩艶選手とも一緒に活動していたため、そうしたサッカーの話や家族の話で盛り上がります。

― ワールドカップでのコミュニケーションはどのような言語で行われているのですか。

小沼さん 共通言語は主に英語、スペイン語、そしてフランス語です。特に若い世代は英語を話せる割合が高いですね。Fabio は英語が堪能なので英語で会話しますが、Salvatore は英語があまり得意ではないため、奥さんに通訳してもらったり翻訳アプリを使ったりしてコミュニケーションを取っています。イタリア以外にもインドネシアやマレーシアのチームと交流があり、現地に遊びに行ったりもしています。インドネシアのチームとは今大会の準決勝で対戦しましたが、大変熱意にあふれる素晴らしいチームでした。

― 各国のチームには、やはりその国や地域のカラーや特徴があるのでしょうか。

小沼さん 各国のチームカラーは明確にありますね。A代表(フル代表)のサッカーと弁護士チームのサッカーの特徴はよく似ていて、各国のサッカー文化がそのまま弁護士チームにも反映されていると感じます。例えば、ブラジル代表は非常に技術が高いですし、ヨーロッパのチームは組織的なサッカーをしてきます。アルゼンチンなどは、審判の目につかないところで体をぶつけてきたりユニフォームを引っ張ったりする、「マリーシア」のような狡猾なプレーを巧みにやってきます。

― 日本チームの強みや特徴はどのようなところにありますか。

小沼さん 日本チームの特徴は、みんなが勤勉でよく走れること、高い俊敏性(アジリティ)、そして規律がある点だと思います。また、最近は基本的な技術レベルが上がってきたことも強みです。

― 小沼先生には、2023年度の関弁連会報(115号)の趣味・随想欄で、「私の趣味 弁護士サッカーワールドカップ」と題してご寄稿いただきました。その中では「日本はまだまだ優勝を狙えるレベルに達していない」と書かれていましたが、そこから今回、年齢制限のないカテゴリーで見事優勝という大きな目標を達成されました。この短期間でのレベルアップの要因はどのような点にありましたか。

小沼さん 近年、法曹サッカーに参加する若い方のレベルが上がったことが大きな要因の一つです。法科大学院制度が始まって以降、サッカーをかなり高いレベルでやってきた方が若くして司法試験に合格し、弁護士になるケースが増えています。法曹サッカー大会などで若くて有能な選手がいたら声をかけ続け、チームの底上げを図ってきました。2024年のアジア大会で優勝し、その時のメンバーが今回のチームの中心となりました。若手のレベルアップと、これまでチームを中心となって支えてきたベテランメンバーとの融合が上手くできたことが、今回の結果に繋がったと思います。

― 大会のスケジュールは非常に過酷だと伺いました。

小沼さん 大会ごとに多少違いはありますが、今回は40分ハーフの試合を1週間で5試合行うというスケジュールでした。昔は8日間で7試合というレギュレーションの時期もありました。プロでも中3日ほど空けるのに、弁護士ワールドカップはほぼ連戦で、しかも暑い気候の中で行うため体力的にはかなり厳しいです。今回は選手が20人登録できたので恵まれた状況でしたが、過去には13人や14人で戦ったこともありました。

― 日常の弁護士業務はとても多忙かと思いますが、過酷な大会を戦い抜くために、日々の業務の中でどのように練習やコンディション作りの時間を捻出されているのでしょうか。

小沼さん 頻繁に全員で集まって練習することはできないため、個々の日々のトレーニングがとても大事になります。トレーニング時間を捻出するための業務効率化は昔からかなり意識していますね。例えば、最近は多くの方が利用されますが、クラウドなどは以前から活用してきました。また、持久力強化のために事務所の執務室にエアロバイクを置いていて、それを漕ぎながら本を読んだりスマホでメールを返信したりと、仕事をしながらトレーニングできる工夫をしています。また、自宅の庭を小さなサッカーグラウンドのように整備して、子どもと一緒にボールを蹴ることで、個人のトレーニングと家族とのコミュニケーションを両立させています。週末や夜には、地元のコミュニティでボールに触れる機会も意識的に作っています。

― チームメンバーが全国に散らばっている中で、チームとしての意識や方向性の統一はどのようにされているのですか。

小沼さん メンバーは東京、大阪、名古屋などの大都市のほか、北は福島から南は長崎まで各地に分散しているため、全員が集まって行うトレーニングは大会前に2回だけでした。普段は各自が所属する弁護士会のチームでトレーニングをしています。以前は参加メンバーのコンディションを上げるための細やかな気配りを意識していましたが、近年は自主的にトレーニングをするメンバーが中心になったため、個人のコンディションについてはあまり気にする必要がなくなりました。また、以前はキャプテンがスターティングメンバーを決めていましたが、世界の強豪を見渡したときにそのようなチームはありませんでした。そこで2016年頃からは、外部から監督やトレーニングコーチを招き、戦術やチーム作りの方向性をしっかり準備して大会に臨むようにしています。

― 海外の弁護士の方々と交流されて、国によって仕事と生活のバランスや価値観の違いを感じることはありますか。

小沼さん それはものすごく違うと感じます。ヨーロッパの弁護士は家族との時間を非常に大事にしており、日本の「深夜まで働く」ような勤務形態を伝えると、「君たちは何のために生きているんだ」と真面目に驚かれます。イタリアの友人は、日中の2〜3時間を割いてスポーツクラブでテニスやサッカーをし、昼食をとって友人と交流してから仕事に戻るというライフスタイルを送っており、それが仕事のネットワークにも繋がっています。日本のように夜まで事務所で仕事をしているのは、世界的に見ると独特な働き方なのかもしれません。またブラジルやタイのように、一日の仕事終わりに飲みに行くような感覚で日常的に弁護士同士が集まってサッカーをし、それがコミュニティの土台になっている国もあります。

― 反対に、「海外でも変わりはないのだな」と感じるようなことはありますか。

小沼さん 試合が終わった後に話をしていると、「難しいクライアントへの対応に悩む」といった仕事上の悩みは国境を越えて共通していますね。自己主張の強い国の弁護士だとクライアントの自己主張も強くなるので、「お互い大変だね」と共感し合う場面があったりして、そこは同じ職業であるがゆえにコミュニケーションを取りやすいと感じます。

― ピッチ上での弁護士の皆さんの様子はどうですか。「弁護士だから非常に難しい戦術を用いる」「上品にプレーする」といったイメージとは違うのでしょうか。

小沼さん 全く違いますね(笑)。「弁護士だから頭を使いながら上品にやっているのでは」とよく言われますが、弁護士の頭の使い方とサッカーの頭の使い方は別物です。サッカーの成熟度は幼少期からの積み重ねによるものなので、ピッチ上では弁護士という職業は関係ありません。対戦相手から「本当に弁護士か?」と言われるほど激しいプレーをする選手もいます。

― サッカーという激しいスポーツに真剣に打ち込み、海外の弁護士と交流される経験は、普段の弁護士業務にもポジティブな影響を与えていますか。

小沼さん 非常にポジティブな影響を感じています。目標に向けて日々の仕事を頑張るモチベーションになりますし、サッカーを続けることは健康管理に直結し、仕事の集中力を高める点でもプラスに働いています。また、この大会を通じて知り合った友人たちの影響もあり、スポーツ選手の海外移籍代理人やマネジメント、クラブ関係の仕事といったスポーツ分野の法務も行うようになりました。さまざまな国の弁護士の働き方や考え方を聞き、多様な価値観に触れることで大きな刺激を受けています。

― 最後に、これからの活動に向けた意気込みや今後の目標を教えてください。

小沼さん 今回、目標としていた年齢制限のないカテゴリーで優勝を果たし、一つの大きな目標を達成できました。大会には35歳以上や45歳以上のカテゴリーもあるため、次は別のカテゴリーでの優勝を目指したいと考えています。サッカーを続けることは勝ち負けだけでなく、心身ともに健康でいられること、そして世界中の人と交流できることが大きな魅力ですので、これからも続けていきたいですね。さらに、弁護士としての専門性を活かしてスポーツ分野の業務も継続していきたいと思っています。この分野を扱う弁護士は増えてきましたが、まだ多くはありません。日本代表選手の海外挑戦をサポートするなどして、FIFAワールドカップで日本代表が優勝する姿を生きている間に見届けたいですね。

― 選手としても、代理人がサッカーを理解してくれているということは大きなプラスになりそうですね。

小沼さん 選手と信頼関係を構築しやすく、また円滑なコミュニケーションを取りやすいように思います。

― 本日はお忙しい中、貴重で刺激的なお話をたくさんお聞かせいただき、本当にありがとうございました。今後のさらなるご活躍を心より応援しております。

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