関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

シンポジウム

平成17年度 食の安全・安心を考える

平成17年度シンポジウム委員会
委員  瀬 野 真 志(静岡県)

1 はじめに

 平成17年9月30日(金)午前10時からホテルセンチュリー静岡にて,「食の安全・安心を考える」をテーマに,平成17年度の関東弁護士会連合会シンポジウムが開催され,福岡伸一青山学院大学教授による基調講演,矢野忠義カネミ油症医療恒久救済対策協議会会長による特別報告,及びパネリスト4名によるパネルディスカッションが行われました。以下,当日のシンポジウムの概要を報告します。

2 基調講演

 福岡氏による基調講演では,食の安全に関連して,今,もっとも注目を集めているBSE問題を題材に,BSE問題が我々に問いかけたものは何かという内容でご講演をいただきました。

 何故我々は食べ続けなければならないのかという食べることの意味から話が始まり,BSE発症の背景には食物連鎖の人為的変更,給餌工程の簡略化という経済効率優先の発想があったこと,日本とアメリカでのBSE対策の現状,アメリカ産牛肉の輸入再開にかかわる議論の問題点(リスク論を持ち込むことの危険性,消費者は利益を享受せずに危険だけを負担する立場にあること,BSEの感染源,感染ルートも不明であることなど)について,非常に分かりやすく興味深いお話をしていただきました。

3 特別報告

 矢野氏による特別報告では,甚大な食品被害をもたらしたカネミ油症事件の被害実態及びこれに対する被害救済の実情が報告されました。被害発生から約40年の歳月を経た今日も,恒久的な医療対策が整備されておらず,国からも被害救済のための具体策が示されていないなど十分な救済措置がとられておらず,我われ弁護士会に対しても被害救済へ向けた国への働きかけが強く要望されました。

4 パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは,基調講演をしていただいた福岡氏の他に,行政の立場から岡山英光静岡県食品衛生室主幹,生産の立場から松沢政満有機農業福津農園園主,消費者の立場から三宅征子食の安全・監視市民委員会委員にご参加いただき,活発な議論をしていただきました。
 三宅氏は,食品安全委員会に消費者の声が反映されていないという現状を踏まえ,消費者の行政に参加する権利の確立を重要課題の1つとして提言し,岡山氏は,行政としてより積極的に消費者の声を反映させた施策を実施していきたいこと,またその前提として消費者が食に関する正確な知識を持つことも重要であることを述べ,松沢氏は,循環型社会の思想を持ち,消費者と生産者とが一体となって心と身体のふるさとを生産の現場から発進していくことが食の安全を実現していくためには重要であることを説き,さらに,福岡氏からは,食品が我われの手に届くまでのプロセスに思いを馳せることの重要性について発言をいただきました。

5 結び

 今回のシンポジウムは,「誰にでも分かりやすく面白いシンポジウムをやろう」ということからテーマを選定し,準備を進めて参りました。本シンポジウムが,皆さんにとってわかりやすく,「食の安全」に対する関心を少しでも高めたものであれば,シンポジウム委員会としてはこれ以上の喜びはありません。

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