関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

シンポジウム

平成19年度 市民に開かれた家庭裁判所をめざして

会報広報委員会
委員 鶴間 洋平(第一東京)

1 はじめに

 平成19年9月21日(金)午前10時から,平成19年度関東弁護士会連合会シンポジウムが,新潟市・朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)にて開催されましたので,以下のとおりご報告致します。

2 部会報告

 理事長挨拶,委員長挨拶の後,基調講演に先立ち,少年部会及び家事部会から,それぞれ報告がなされました。なお,平成19年度シンポジウム委員会は,家事部会・少年部会の2部会に分かれて幾つかのテーマを検討されています。
 少年部会においては,少年法等改正の動向を踏まえ,付添人制度に関する問題,触法少年に関する諸問題,検察官送致(逆送)に関する問題等について,報告と提言がありました。
 家事部会においては,家族法と現実社会の乖離や新しい問題の発生により,家庭裁判所の役割の重要性が増していることを前提に,ジェンダー問題,夫婦間暴力や,離婚後の子どもをめぐる問題について,報告と提言がありました。また,各地の家庭裁判所委員会の活動と課題について報告がありました。

3 基調講演

 基調講演では,新潟大学法学部教授の南方暁氏から,「イギリスにおける『子どもとの面会』,『養育費立替払い制度』について」についてご講演いただきました。
 時間的な制約があったものの,イングランド・ウェールズにおける子の監護と養育費について,制度や運用の特色についてご説明頂き,父母の自立的判断を重視しながらも,司法・行政の手によって子の福祉を確保しようとしていることをお話し頂きました。日本において,今後,離婚した夫婦の子どもの福祉を確保するための制度を考えるにあたって,非常に参考になるお話でした。

4 パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは,基調講演をしていただいた南方氏のほかに,新潟家裁判事の鈴木政弘氏,新潟家裁調停委員の中島信子氏,社団法人家庭問題情報センター(FPIC)常務理事の山口恵美子氏及びシンポジウム委員会小淵真史委員にご参加頂きました。
 テーマは多岐に渡りましたが,面接交渉の困難さの克服や養育費の履行確保といったいわば伝統的な課題のほかに,調停手続における財産調査の進め方やその他調停進行上の工夫といった手続上の問題,さらに,養育費の算定表を用いることの功罪や,年金分割の離婚給付へ及ぼす影響といった点についても議論されました。
 離婚問題について,弁護士や家庭裁判所に対する国民の期待に応えるためには,これまで通りに事件処理をしていくだけでは不十分であり,さらに工夫をするために,弁護士ないし弁護士会と家庭裁判所が協力していくことの必要性が感じられました。

5 定期大会における大会宣言

 シンポジウムに引き続き行われた平成19年度定期弁護士大会において,シンポジウムの成果を踏まえ,「市民に開かれた家庭裁判所をめざして」と題し,家事関係と少年関係について,大会宣言が決議されました。

6 結び

 私は,シンポジウム委員ではありませんので,内部の苦労話等のご報告はできないのですが,325頁からなるシンポジウム報告書と,別冊のアンケート調査結果をみると,実行委員の先生方のご苦労は並々ならぬものであっただろうと思います。
 上記報告書とアンケート調査結果は,離婚や少年事件に関するものであり,会員の先生方の日常業務にも関わる最新の報告ですので,興味のある先生はぜひご一読下さい。

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