関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

シンポジウムシンポジウム

2019年度 弁護士・弁護士会によるネットワークの構築~多様な連携の現場から~

2019年度シンポジウム委員会
委員長 平 哲也(新潟県)

1 一般参加が3分の1!

 9月27日(金),「ANAクラウンプラザホテル新潟」において,関弁連シンポジウムが行われました。おそらく過去に例は無いと思われますが,4つのシンポジウムを行いました。「学校」「事業活動」「高齢者福祉」「刑事司法と福祉」4分野に分かれ,各分野での「連携」を考え,最後にまとめの全体会を行うという方式で行いました。合計656名(学校241,事業144,高齢117,刑事106)の参加をいただき,656名の内210名が一般の方の参加でした。一般参加の方が多かったことは,連携にふさわしく,特に新潟県内への影響は大きいと思われます。関弁連管内の皆様には厚く御礼申し上げます。
 各分科会の状況については,新潟会のシンポジウム委員から紹介させていただきます。


2 各分科会の状況

(1)「学校との連携」
 近時,スクールロイヤーが注目を集めています。分科会では,スクールロイヤーを中心に,学校と弁護士(会)との連携について議論しました。
 坂田仰教授(日本女子大学教授,日本スクール・コンプライアンス学会会長)による基調講演では,「スクールロイヤーと学校現場~関係性の捻れの中で~」と題し,学校を取り巻く現状について,「信頼関係型学校観」と「契約関係型学校観」という2つの視点から,トラブル発生前は前者の視点であるが,トラブル発生後は後者の視点に転換し,関係性に“捻れ”が生じているとして,それを踏まえ,スクールロイヤーに対しては,予防的コンプライアンスの重要性を理解し,かつ,いわゆるアウトサイダー(少数派)としての自覚が必要である,との指摘をいただきました。
 基調報告では,①文部科学省の受託事業としてスクールロイヤー制度を導入している5府県(茨城,大阪,三重,大分,徳島)での調査報告,②いじめ予防授業に関する報告,③教員の働き方改革に対する提言を行いました。特に,①については,各委員が直接現地に赴き,各教育委員会や各弁護士会から貴重な生の情報を収集したもので,現状,どこにも出回っていない情報です。一般参加者,特に学校関係者からは,非常に貴重な情報が得られた有意義なシンポジウムでした,とのお言葉を頂戴しました。
 今後各地で,今以上に,スクールロイヤー制度の導入が検討され,また実施されていくことが予想されます。弁護士と学校との連携がますます進んでいくことに,本分科会が少しでもお役に立てるよう,本分科会委員一同,願っています。

(副部会長 関雅夫(新潟県))

(2)「事業活動との連携」
 第2分科会では,各単位会が既に連携活動を進めている事業承継分野と,大都市圏の単位会を除き本格的な活動が進んでいない創業支援分野に焦点を当て構成しました。当日のシンポジウムでは,事業承継分野,創業支援分野で,それぞれ先進的な活動をしている金沢弁護士会,福岡県弁護士会の取り組みを中心に,あるべき弁護士・弁護士会の連携のあり方について検討を行いました。
 パネルディスカッションでは,金沢会,福岡会それぞれ,連携関係から具体的な案件処理に結びついた事例の紹介や現在抱えている課題についてご説明いただきましたが,いずれも,関係機関との「顔の見える関係」が構築できていることが連携による成果が上がっている要因であると感じられました。また,第二東京弁護士会の幸村俊哉会員からは,連携先の懐に入っていくことの意義や,小ユニットでの太いパイプの構築の必要性についてご教示いただきました。
 各パネリストからの指摘は,私も含め,これから事業者支援分野での取り組みを強化していきたいと考える若手弁護士にとって,大変参考になるものであったと考えています。参加いただいた皆さんの地元での活動の一助となれば,幸いです。

(副委員長 朝妻太郎(新潟県))

(3)「高齢者福祉との連携~こんな弁護士なら連携したい?~」
 須賀翼委員(埼玉弁護士会)が埼玉県三郷市内に2月に開業したばかりだったことから,三郷市役所のみなさんなどに,連携のきっかけづくりなどについてインタビューし,その様子をビデオに流しました。積極的に挨拶回りをするとよい,勉強会やネットワーク会議などに参加するとよい,同委員については,にこやかで話しやすい雰囲気がよかったとのことでした。
 パネルディスカッションでは,パネリストの吉井馨さん(三郷市役所),門馬正明さん(三郷市地域包括支援センターひこなり北),渡部敦子さん(足立区地域包括支援センターさの)から,連携したいと思う弁護士として「他の支援者と同じ立ち位置で考えられる弁護士」「チームで支援することを理解する弁護士」「事案の処理状況について適宜報告する弁護士」などを挙げてもらいました。「知識や経験があるに越したことはないが,コミュニケーションが取れるかどうかが重要」というご意見もいただきました。
 行政や福祉と連携をしたいけど,どのようなときにどこと連携すればよいのかわからないという会員向けに「ソーシャルワーク・ノート」を作成し,配付しました。渾身の作ですので,是非とも活用していただけますと幸いです。

(副委員長 中澤泰二郎(新潟県))

(4)(刑事司法における)「福祉と司法の“本当の連携”とは?」
 罪に問われた障がいのある人や認知症の人について,弁護人と福祉や医療の専門職との“連携”が試みられています。分科会では,このような連携の必要性や現状,課題について議論しました。
 山田恵太会員(東京弁護士会,(一社)東京TSネット代表理事)からの基調報告では,新規受刑者のうちの知的障がいのある人の多さや,知的障がいのある受刑者の手帳所持率の低さといった現状が紹介されました。ここから,有効な防御をしたり福祉的支援を受けたりする機会が不足していることがうかがえます。
 パネルディスカッションでは,①支援の必要性に気づくこと(Awareness),②支援に向けて連携すること(Action),③刑事手続が終わっても支援を受けられるようにすること(Aftercare)という3つのAを題材に,パネリストの山田会員,飯田智子さん(認定NPO法人「明日の空」代表理事)や高津努さん(群馬県地域生活定着支援センター長)から実践に基づくコメントをいただきました。弁護人を務める立場として,被疑者・被告人に出会って,「この人のこれからの生活はどうなるだろう」と想像して,連携を始めることが決定的に大切だと感じました。

(事務局長 小出薫(新潟県))

3 シンポジウム後の動き

 シンポジウム後,10月21日には,木村良二関弁連理事長と彦坂浩一副理事長が,法務省司法法制部を訪問され,金子修司法法制部長と面談し,大会宣言をお渡しするとともに,刑事分野に関して,高齢者や障がい者の刑事手続に際して,弁護士が福祉等の専門職と連携し,継続的な支援活動を行うための経済的支援を要請してこられました。金子法制部長からも前向きな応答をいただいたとのことです。この分野はじめ,4つの分野での連携活動,連携への支援が広がっていくことを期待しております。今回関わったシンポジウム委員の先生方が,各地でその動きを広めていっていただけると思います。

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