関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

シンポジウムシンポジウム

2020年度 スポーツにおける公正性・公平性の実現のために~障害者スポーツ,不祥事対応を題材として~

2020年度関弁連シンポジウム委員会事務局長 阿部 新治郎(神奈川県)

1 定期大会・シンポジウムをWEB開催!

 9月25日金曜日,関弁連定期大会・シンポジウム初の試みとして,神奈川県弁護士会は,運営担当会として,第67回関弁連定期大会・第50回シンポジウムのWEBでの開催に挑戦した。
 午前中のシンポジウムは,午後の定期大会の会場でもある横浜みなとみらい地区のパシフィコ横浜にシンポジウム運営本部を設置し,「スポーツにおける公正性・公平性の実現のために」をテーマに3時間半の完全WEB開催とした。さらなる新たな試みとして,シンポジウムで取り上げたテーマに沿い,シンポジウム発表の手話による同時通訳を行い,合わせて配信したことも特筆されるべき事項である。


2 シンポジウムの内容

(1) 概要
 神奈川県弁護士会会長の剱持京助会員による開会宣言と関東弁護士会連合会理事長の伊藤茂昭会員(東京)の挨拶の下,澤田美穂子会員(神奈川)と多賀啓会員(第一東京)が司会を務めて,シンポジウムが始まった。
 東京でのオリンピック・パラリンピック開催が期待される中,シンポジウムの内容としては,スポーツ権の公正かつ公平な実現に向け,障害者スポーツとスポーツ団体における不祥事対応の問題を具体的テーマとして取り上げた。
 渡邉健太郎会員(第一東京)がホストとして管理したzoomウェビナーを用いて進行し,手話通訳者の実況画面等を含め,事業者が中継・編集して関弁連のホームページ等で放映したが,視聴者は,一般参加者が561名,弁護士参加者が363名の合計924名であり,午後の定期大会参加を予定して早めに来場してシンポジウム放映を視聴した関弁連会員も50名程度いたため,合計で1000名近くが視聴する結果となった。ご視聴いただいた関弁連管内の方々には厚くお礼を申し上げる。
 また,このシンポジウムの録画は,関弁連ホームページで公開されており,スポーツ団体からの法律相談に対する一助となることは間違いないので,当日の視聴がかなわなかった方も是非1度ご視聴下さるようお願いしたい。

(2) 障害者スポーツをテーマとした前半
 シンポジウム前半では,障害者スポーツの歴史,現状,課題,各障害者スポーツ団体から直接聞き取った問題等を紹介した上,障害者スポーツを行う者に対する合理的配慮の在り方を問い,関弁連シンポジウム委員である斎藤真弘会員(東京),劉セビョク会員(第一東京),堀内賢人会員(山梨),田原洋太会員(第二東京)が発表を行った。 障害者スポーツ団体のヒアリングから把握された障害者スポーツ現場の現在の課題や,競技施設の利用における障害者への合理的配慮が十分ではなかった事例の紹介など,実務家として現場の問題を把握する上で非常に参考となる内容であった。

(3) スポーツ団体における不祥事対応をテーマとした後半
 また,後半では,競技団体内部における暴力等の不祥事への対応方法に関する具体的かつ詳細な解説や,各競技団体に対して行われた不祥事問題に関するアンケート結果が報告され,同じく合田雄治郎会員(第一東京),畑中淳子会員(第一東京),堀口雅則会員(第二東京),飯田研吾会員(第二東京),岩橋一登会員(千葉),澤井真洋会員(千葉)が発表を行った。
 競技において不祥事が生じた場合の対応については,合田会員が司会進行を務めながら各担当者に対して質問を重ねる方式を用い,各発表担当者の回答とこれに対するさらなる質問で,不祥事対応の処理や進行が具体的にイメージできる形で紹介がされた。視聴者の弁護士からは,スポーツ問題における不祥事対応のみならず,一般的な事件処理としても参考になるとの声をいただき,非常に好評であった。


3 大会宣言と今後予定される活動

 シンポジウム後の定期大会において,スポーツにおける公正性・公平性の実現を目指す大会宣言が採択されたが,その内容は,①スポーツ権の保障やスポーツにおける公正性・公平性の重要性の啓発,②スポーツロイヤーの養成と権利侵害に対する救済手続きの研修,③スポーツ団体,並びに,競技者への周知・広報,④障害者スポーツと差別・権利侵害事例の研究の4つの具体的内容を含めたものである。
 本年11月に予定されているシンポジウム委員会の総括を踏まえ,関弁連内でのワーキングチームの発足も検討しながら,本シンポジウムのテーマであるスポーツにおける公正性・公平性の実現を目指し,関弁連としての活動が継続できるように努めたいと考えている。

追記:大会宣言を受けて関弁連内で「スポーツロイヤー養成プロジェクトチーム」を発足させ,2021年度には管内弁護士に向けた勉強会4回と全国に向けた講演会1回を行い,延べ600名近い参加者を得た。2022年度も引き続き,同チームによる勉強会等を精力的に開催し,スポーツにおける公正性・公平性の実現を目指した関弁連としての活動を継続する予定である。

PAGE TOP