今回の勉強会では、「立憲主義」・「民主主義」・「違憲立法審査権」という、今では自明であると思われている原理・制度について、いったん立ち止まってその歴史的な背景なども参照しつつ、検討を試みた。
「立憲主義」とは、憲法により国家権力を統制しようとする原理である。「民主主義」とは、国の在り方(法律、政治等)をその国の国民自身が決定する(決定権を持っている。)という原理である。
立憲主義と民主主義は、互いに密接に関連し、ある種の相互補完の関係にある。すなわち、国家権力から自由であるためには、国民が政治に主体的・能動的に参加する必要があり、他方で憲法を通じて全ての国民の自由・平等が保障されてこそ、「個人の尊重」という民主主義の理念が実現されるのである。
立法や行政の行為により国民の自由・平等が脅かされたとき、実際に憲法の理念を実現するのは、裁判所である。裁判所は、違憲立法審査権を有しており、問題とされた立法や行政の行為が憲法に適合しているか否かを審査する。「憲法の番人」あるいは「人権の最後の砦」とよばれる所以である。
しかし、法律や条令は、選挙を通じて“民主的に”選ばれた国民の代表者(国会議員や地方議員)により制定されるものである。また、行政府の長である内閣総理大臣は国会議員の中から指名され、各都道府県知事等は当該地域の住民による選挙により選任される。他方、違憲立法審査権を有する裁判所(裁判官)には、選挙のような民主的背景はない。
そのため、違憲立法審査権を行使する局面では、民主的背景を持つ立法・行政の行為を、非民主的な裁判所が否定することの正当性が問題となる。
このような局面では、立憲主義と民主主義との間に緊張関係(対立関係)があるように見える。
さらに進んで考えてみると、そもそも、裁判所にも民主的な背景を求めるべきであるのか、かえって“非民主的であること”のメリットがあるのではないかという視点からの検討も可能であろう。
以上