関東弁護士会連合会は,関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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2020年度(令和2年度) 声明

東京電力福島第一原子力発電所事故損害賠償請求訴訟における東京高等裁判所判決(第一審・前橋地方裁判所)に関する理事長声明

  1.  本年1月21日,東京高等裁判所で,東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)に関する損害賠償請求訴訟の判決が言い渡された。
     この判決は,全国各地の福島第一原発事故の損害賠償を求める集団訴訟の中で最初の判決となった前橋地方裁判所の控訴審判決であり,国と東京電力を被告とする集団訴訟の中で,東京高等裁判所管内としては初の控訴審判決でもある。
     第一審判決は,福島第一原発事故について,国の責任を認める画期的なものであり,かつ,いわゆる中間指針等が示す賠償額の枠を超えて国及び東京電力の損害賠償責任を認めたものであった。
     本日言い渡された控訴審判決のうち,東京電力に命じた損害額については,完全賠償には及ばないものの,一部原告らの賠償額を増額する判断をした点は評価できるものと考える。賠償額の増額に至った原告の方々の取り組みに改めて敬意を表する。
     一方,国に対しては,予見可能性,結果回避可能性のいずれも認められないとして賠償責任を否定した。しかし,予見可能性を否定した点については,東京電力が規制者である国を巧妙に操り,国が「規制の虜」となっていた本件の実態を無視するものであるといわざるを得ない。また,結果回避可能性を否定した点については,国は,原告側が主張するような措置を講じても福島第一原発事故の発生を回避できなかったことについて,控訴審においても十分な主張立証を行えなかった。それにもかかわらず,国の主張に追従して結果回避可能性を否定したのであり,司法判断として極めて不当といわざるを得ない。
     当連合会は,損害賠償請求訴訟に取り組んできた本件訴訟の原告ら及び原子力損害賠償群馬弁護団に対して敬意を表すると共に,これまで福島第一原発事故被害者の支援に取り組んできた当連合会としても,事故から10年の節目を迎えようとしている今日,改めて国と東京電力に対して,被害を受けた住民に十分な損害賠償を速やかに行うことを求める。

 2021(令和3)年1月22日

関東弁護士会連合会 
 理事長 伊藤 茂昭

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