1 はじめに
本勉強会では、瀧本哲史「武器としての決断思考」(星海社新書)を参考文献として、ディベートの技法について検討をした。
2 ディベートの基本理論と目的
ディベートは議論に一定のルールを設けたものであり、最終的には自らの中で「一人ディベート」を行い、物事に対して多角的な根拠を基に決断し行動できる人材の育成を目指している。また、ディベートの技法を身につけることにより、多様化する社会において、自身とは共通のバックグラウンドを持たない他者との相互理解を深めることも期待される。
基本的なディベートのルールとして、①明確な議題が設定されること、②議題に対する賛否(賛成派・肯定派・積極派/反対派・否定派・消極派)の立場は、ディベート直前にランダムに決定されること、③参加者双方に平等な発言機会が与えられること、④最終的には勝敗の判定がされることが挙げられる。
特に論題は「何々すべきか否か」という二者択一まで具体化し、好みの問題や単なるアイデア出しは避けるべきである
3 メリット・デメリットの論証構造
ある論題に対して、肯定派は、「メリット」を提示する。メリットは、内因性(現在の問題)、重要性(問題の深刻さ)、解決性(その問題は、論題の行動をとることにより解決可能であること)の3つの要素で構成される。
これに対して、否定派は、論題に対する「デメリット」を提示する。デメリットは、発生過程(新たな問題の発生)、深刻性、固有性(現状、その問題が発生してないこと)からなる。
これらのメリット/デメリットを構成する各要素あるいは根拠と主張をつなぐ推論過程(演繹、帰納、因果関係)に対し、前提の存否や量・質の観点から反論を行っていく。
最終判断は、メリット・デメリットを「質×量×確率」の軸で評価し、最後は根拠に基づく価値観によってどちらが説得的かを判定する。
4 教育現場における実践と工夫
勉強会に出席した教員からは、自身の勤務する中学校では、通年で6回のディベートを実施し、生徒が役割(立論、質問、反駁、司会、ジャッジ)をローテーションで経験する取組が行われた。回数を重ねることで、生徒は勝ち負けにこだわらず相手の意見を理解できるようになり、また、情報端末を活用したプレゼン能力も向上した。
また、別の教員からは、指導上の課題として、声の大きい生徒や優等生の発言が重視される「属人性」を排除するため、全員に役割を割り振る工夫や、印象論を避けるための明確な点数化が必要であると言った意見があった。
以上